まちの本屋が、できること

今月はいろんなことがありました。本当に目まぐるしかった。笑。でも、会いたい人にはやっぱり会いたい、会えるうちにあっておきたい。

ということで岩手県紫波町・紫波中央駅からすぐのところにある『オガール』という施設には図書館やら飲食店やらマルシェやら宿泊施設やら。そんでもってオシャレな外観とお店のロゴやフォントもクールなんです。初めて行ったのですが、びっくり!

そんなこちらに初めてお邪魔したのは。そんな紫波町図書館が主催するこちらのイベントに行きたかったからです。

さわや書店でまず知り合ったのは、田口さんでしたでしょうか。当時、IBCラジオにもご出演されていたりして、さわや書店でお声をかけたのでした。「わたしの番組にも出ていただきたい」と。IBCさんはAM波、わたしはFMということでOKが出て、不定期にいらしていただくことになった。「夏休み、オススメの本は?」とか。そんで(さわや書店の海老蔵こと、笑)松本くんは大学の後輩だということが判明し、しょっちゅうさわや書店に行ってはあんな本、こんなことを営業妨害のように話していました。なつかしい。

そもそも田口さんにお尋ねしたんだと思います、「伊藤店長という方は?」と。わたしがFM岩手で番組を担当して、時を経てさわや書店でお話ができるようになる間に伊藤店長は退社されておられました。

きのうツイッターにうわーっとつぶやいてしまいましたが、わたしが大学生の時に『レゴブロック』のクリスマス販売要員としてバイトをはじめた大学1年の冬。そのまま、年末年始も、それ以降は週末だけ販売員として立ってよ、と、ある意味トントン拍子でバイトが続くことになりました。日給も悪くなく、当時の二子玉川高島屋のバイトチームも大学生が多くて、何より自分がレゴブロックにハマり(→のちにTVの『なんでも鑑定団』にまで出演するようになるので。笑)、おまけにレゴジャパンの方々もいい方ばかりで、毎週末はニコタマ高島屋(通称タマタカ)で過ぎていきました。今、たぶんこんなレゴ持ってるのは日本でわたしだけだろうという一品がゴロゴロあります。はい自慢です。

あまりいろいろ書くのは当時の内部事情に関わるので(笑)さっくり書くと、バイトにも関わらず売り上げやら全国の売り上げやらを教えてもらえるようになりました。あの当時の不動のトップは全ての直営店舗を通して横浜高島屋でした。売り場を見に行ってはベテラン販売員(星さん、というわたしの母親以上の年齢の方でした。お元気でしょうか)の方にあれこれお話を伺ったのも懐かしい思い出です。

最終的にはなんとなく20位には入っていた売り上げが全国ベスト5に入るようになり、確か3位くらいになった気がします。だから、大学最後の冬は新宿にオープンする高島屋のスタッフへと呼んでいただき、卒業の追試もある中(本当に学業はからっきしでした)いちからお店を作り上げる作業に加わらせていただいたのも懐かしい思い出だし、そもそも入社したエイベックスもそうだけど、大学時代にこのバイトを通して残した実績と数字を就職活動で話したことがパスしたと思っています。

という、前段が長いのは。売り上げを伸ばそうとしても接客と子供たちと遊ぶだけでは限界があったし、わたしなりに試行錯誤はすごくしたつもりです。ディスプレイも頻繁に変えたり、陳列棚の使い方を変えたり。そんな時に何気なく耳にした(確か)NHKの全国ニュースでした。

『天国の本屋』という本を全国的なベストセラーにしたのは、岩手県のさわや書店。伊藤店長のPOPが功を奏したと。

今でこそPOPは普通ですが、あの当時はたとえばレコ屋に行っても印刷された文字で、手書きのPOPというのはあまり一般ではなかったと思います。

なるほどなー…

そこから厚紙とマジックを買っては、バイト中に工作でした。レゴのカタログを切ったり貼ったり、何を際立たせよう、と。美術のセンスなんかかけらもないけど、それが面白いことにPOPがあるかないかで商品が動くことがわかってきました。週末の販売で立った時に迷っていて買わないお客様のことを考えて、もしかしてと戻ってきた時に手にしてもらえるようなことを書いたりしていると、それが面白いことに実際に商品が動いていました。

(撮影可でした)

さわや書店の‘末っ子’こと長江さん(左、文庫Xの仕掛け人です)と同じく、わたしも大学を浪人していなければ本を手にすることはなかったでしょう。実際、高校時代に住んでいた盛岡のさわや書店には、教科書の問題の答えが載ってるような参考書しか買いに行ったことがないです。

いちばん右に鎮座する伊藤さんは、さわや書店に入社された時に(さわや書店に)1億5000万円ほどの借金があったといいます(驚愕!)!それを3年で返済された事実。乙武さんの『五体不満足』を読んですぐに「これは!」と裏ルート(笑)も使って仕入れた1200冊がわずか3日で売り切れたこと(ちょうどテレビのオンエアがあったらしい。そういう嗅覚にも優れた方なのですね。他の書店ではまだ扱っていない時だったそうです)。茶々を入れる形で松本くんが「この本を‘死体不完全’って本を探してるんだけど!」と年配の女性が買いに来たなんて笑えるエピソードがあったり。ちなみに本の初版って1万部があれば、なのに、その10分の1にもなる五体不満足がさわや書店にかき集められあっという間にさばいた事実。また、どのようにして本に出会うか、今読んでほしい本の紹介(メモしてきました、追って読もう)、などなど。あっという間のお時間でした。

そんな伊藤さんのお話には細かいけど、「(当時のさわや書店は)什器の使い方がダメだった」など頷ける話も。そうなんです什器をいかに使うかってすごく、販売の根本の大事な問題なんですよね!

現在、伊藤さんは一関の図書館で働いておられる。図書館といえば子供や児童のためにあるイメージだけど、最近は年金も減ってきて圧倒的に高齢者が来る場所になっていると。そんな図書館で若いスタッフだと、年配の方にどんなニーズがあるかが分からないと。このご指摘ももっともだと思います。

そしてこの日のサプライズは、伊藤さん以外の3名もさわや書店の‘卒業’が決まっていて、この日が現さわや書店店員としては、(たぶん)最後のこうした揃う舞台だったということ。口がぽかーんとしてしまいました…

今は1日1軒の本屋がつぶれている。2020年のオリンピックを界にそれは3倍に加速すると見通しておられた。優秀な作家はたくさんいてむしろ増えている、でもそれを届ける、届けられる書店員が減っているという事実。

時間をオーバーして催しが終わって。1日出張販売のさわや書店で本を買って来たうちの1つがこちら。

岩手がほこる高橋克彦さんの『火怨』です。どこでも売っている文庫だけど、さわや書店はこんなパッケージを1冊、1冊に。

これを裏返すと、

「この物語は岩手の誇りー」で始まる思いのたけがしたためられている。

そしてさらに、緑と赤を逆にすると、

『戦うあなたに 勇気贈り 届けたい』

…すばらしすぎる…!!!

あの人の手に届くように。伊藤店長がPOPに託していたイズムは、脈々と今のさわや書店に受け継がれています。

 

催しが終わって、伊藤さんもお客さんに引っ張りだこでした。待ちました。だって今、ここでお目にかからないと!

よしチャンス!そして、わたしの顔を見るなり、

「わかっていますよ。ツイッターで拝見していますから。本当に行動的で!」…え!!??

会場を出た頃には真っ暗でした。田口さん、松本くんにも挨拶をして。これからもどうぞよろしく、と。そして伊藤さんとは、今度はお酒をご一緒しましょうとお話ししてきました。

上に書いたようなことを伊藤さんにお話ししたわたしの声は震えていたと思います。勝手に商売の師匠のようにしていた方にようやくお礼と感謝を伝えることができた、そんな感じです。

そして翻って、物を売るという行為は、物を伝えるということで。いま、音楽を伝える(伝えたい)とラジオで番組を担当していることとも、根本はあの当時に考えていろいろトライしたことと変わっていないのかもしれないなぁ、などとも思ったりします。時代は変わってきてSNSが発達してやるべきことは変わっても、「伝えたい人を思いながら」というのは、ラジオに限らず商売においても、やっぱり変わらないのではないでしょうか。と、なんとなく確信のようなものが持てました☆

オガールの施設内にあるカフェで食べたクレープ。シャレオツ&美味!

伊藤さんにお会いできて良かった。実は先週、神戸に行ったのは松原という男に会うためです。ガンの余命宣告2年をクリアして今も生きているけど、で、彼が関わる2デイズのイベントがあって、1日目は元気そうにしていたのにわたしが行った2日目は入院→緊急手術→そして死の瀬戸際から今、這い上がってきています(本人がツイッターを更新しているので)。そんなわけで神戸に行った時に松原には会えませんでした。でも、また近いうちに行くしかないと思ってる!

会いたい人には、もしも自分次第でなんとかできるのなら。会いに行かないと(^^)!

書きながらはらはらと涙が流れて止まりません。いつまで生き動けるか分からない中、自分がどう歩いていけばいいのか分からないままですが、シンプルに。会いたい人とかやりたいこととか、そういうことで選別して進んでいけばいいのかな、とも思います。

オガール行って良かったな。そんなオガールではこんなイベントもあるってよ。地元のバンドマンたちミュージシャンたち、いいぞぉ🎶

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