心で話す〜風の電話を訪れて〜

おととい、文化放送『music with you!』でお話ししたこと。

岩手県大槌町にある、風の電話です。大槌・ありがとうロックフェスの前日入りして行って来ました。

この場所をわたしが知ったのは遅くて、ここ数年のこと。福島県いわき市で毎年、3月11日に開催されているアサイラムというイベントで。「ちえさんに会うことがあったら、ここを教えたかったんです」と。会場でお会いした方(=いわきの知人の知人)にお話を聞いたことでした。

「風の電話は、うーん、タクシーで行った方がいいですね。運転手さんならみんな知ってるから大丈夫ですよ」と、大槌の本屋さん(こちらもすごい出会いと出来事だったので、次に書きます)がおっしゃるので。大槌のショッピングセンターに止まっていたタクシーに乗る。

ところがまさかの。

「いや〜わたし、この町の者でなくてですねぇ、しかもこの仕事を始めたばっかりで分からないんですよね〜、住所とか分かります?」

え!?

ケータイの電波が入って良かった。かろうじて住所を探し当てて運転手さんのナビにイン。「うーん、こんな場所あるのかな?近づいて来たら、歩いてる人に聞いてみましょう!」

…いや…ちょっと待って…‘風の電話のある辺りには、人もあまりいないからタクシーでダイレクトに行った方がいい’という書店・店主のアドバイスだったのに…だ、だいじょうぶなのか…???

どんどん上がっていく運賃。東京と違ってカード払いもできないんだった。あぁなんかもう色々と不安!

(ってな道中を走ること15〜20分ほど)

「たぶん、地図だとこの辺りなんですよね〜あ!人がいるので聞いてみましょう(←救いの神!)」という運転手さん。

わたし;「すみません!」

「あら、風の電話ね!えーとね、無理無理!道が分からない人たちだけじゃ行けるようなとこじゃないから!ちょっと待って、私が車で先導すっから!」…いやいや、そんな!「むしろここで長く車を停めて話してる方が迷惑だから、ほら行くわ!」…そうして地元のお母さんの軽自動車に先導され付いていくこと、そこから数分(そして確かに先導がないとこの場所は分からなかっただろう)。

「あら、ちょうど奥様がいらっしゃる!」

下調べも何もせず向かったわたしも悪いけど、着いた場所は、広大な敷地のいわゆる一般の方の私邸でした。

「どうぞどうぞ」と奥様がひとこと、そして庭いじりに戻って行った。そして先導してくれたお母さんも車を走らせ去った。

さて、この後はどうすべきなんだろうか。さて。

すかさずタクシーの運転手さんが、そう、この方に連れて行ってもらって良かったんだと思う。

「ゆっくり、見て行くことにしましょう。戻ることを考えると、ここは相当(厳しい)ですから。あ、(こちらの家の)旦那さんですかね?すみませーん!」

まるでマネージャーさんとかコーディネーターさんかと思うような動き。

広大な敷地は手入れしても追いつかないほど、で、たくさんの花やら木やら。手をかけておられる素敵なお庭。「ベルガーディア鯨山」と名付けられたお庭の中に、ぽつん、と。

あった。

「ゆっくりされてください。思いがあっていらしたのでしょう」

私邸のご主人が言う。そして、ご主人がタクシーの運転手さんとちょっと離れた場所でずーっとおしゃべりをしてくれている。気を遣ってくださっているのが分かる、そしてそれがありがたい。

そしてわたしは、どれくらいこの場所にいたんだろう。

時が止まる。黒電話の受話器を持つ。なかなか回せないダイヤル。耳に当てる受話器。

人は過去を持ち 現在があって未来がある 又その時々に出会いがあり 別れがある

風の電話はそれ等の人々と話す電話です

お庭の中には、風の電話の他にも『森の図書館』という、私設の図書館があります。石積みの建物のこちらも、ご主人の手によるものです。「せっかくなので、見せていただきましょう!」とタクシーの運転手さん(わたし一人だったら、遠慮していたと思う。だからやっぱりこの運転手さんで良かった)。案内していただきました。

全国から寄付されたという絵本がずらり。「絵本は、言葉なんて分からなくても絵で分かるものなんだよね」おっしゃる通り。こじんまりとした2階に上がると子供が好きな秘密基地のよう。「ここで読むも良し、外の敷地で木々と戯れながら読むも良し、庭の緑に寝っ転がりながら読むも良し」…自由に、好きな環境で。縛られることなく、思いのままに。

そして絵本とともに、宮沢賢治に関する書籍も多々。この理由は、あとで分かることになりました。

陽があるうちに来たのに、もう陽が傾いてしまう、そんな時間までいさせていただきました。

「せっかくなので、ほら、記念撮影!」…タクシーの運転手さんが撮ってくださった一枚。

佐々木さんご夫婦にお目にかかれまして、本当に良かった。また、必ずやおじゃまします。佐々木さんに、またお会いしたいから☆

こと細かに書くのはなんだか違うような気がする。というか、こと細かに書かなくても、自分の中で訪れたこと、感じたこと、を、忘れることはないだろう。

佐々木さんが、この日もお話しししながらおっしゃっていた言葉に「想像力」と「感性」いう単語がある。

もしもわたしの備忘のための拙ブログを読んでおられる方には、ぜひこの場所をあとは自身で「想像」してもらえたらと思います。そしてその想像をするという行為、想像が高じて行動して目にしたり体験すること、それは、自分の「感性」を磨いて行くことになる。

何より佐々木さんご自身が、そうやって生きて来られた方なんだろうなと思っています。先の『森の図書館』だって、まさにそう。言語なんか分からなくても絵を見て想像する、世界が広がる、それを自分の好きな環境で伸び伸び読んで感じることで、感性が育って行く…きっと、そんな思いで作られたのだろうと思う。

 

帰りのタクシーは、運転手さんとあれやこれや話してあっという間でした。たくさんの感謝を伝えて、大槌の中心部に戻ってくると。車中からで全くうまく撮れませんでしたが。毎日、夜になると大槌の山にはこの文字が浮かび上がるそうです。真っ暗になっても、その文字がくっきりと目に入る。

「生きろ」という、三文字が。

(注;生き「る」だったかもしれません。どうにも写真が不確かで、ここはメモしておくんでした、反省)

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